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( History ) 時が醸す味わい 熟成とは

時が醸す味わい-/-熟成とは

1万年の歴史と6つの主要要素による未知の可能性の探求

時を経ることで味わいを豊かに深めてゆく。そんな熟成のメカニズムにはいまだ不可解な点も多く、発見から1万年経ってもなお更なる可能性の探求がなされています。

現在、熟成に関与していると考えられている要素は大きく6つ。

1)温度:
熟成の進度に関わり、適温を保持できない場合には劣化、腐敗につながる。一般的には安定した低~中温を保持することが多い。
2)湿度:
熟成させる対象によって適切な湿度が大きく異なる。高湿ではカビ発生、低湿では熟成物の乾燥という劣化につながることがある。
3)酸素:
微量の酸素が風味をよくする場合もあるが、酸素による酸化が起こり風味を落とすことも。
4)容器:
安定した状態を維持できるかどうかは容器の性質によるところも大きい。また容器に天然物を用いて素材の持つ香りを意図して熟成物の風味に影響させることも。
5)塩分濃度:
塩分を含む熟成物の場合、塩分が多すぎると風味に偏りが出る可能性があり適切な調整が必要。
6)pH:
発酵熟成の場合、酸度が微生物の活動を制御するため、pHが非常に重要な要素となる。

人類の叡智と技術を巧妙に組み合わせた複雑性と芸術性

ここに時間という要素が合わさって複雑に絡み合うため、食品、飲料の熟成には慎重な熟成プロセスの設計、細心の管理が必要とされます。気温や天候に左右される要素もあり、熟成させる場所の選定、用意も困難なうえ、長期に熟成させる場合には要素のコントロールに多大な費用もかかります。

熟成による美味とは、人類の経験値の上にさらなる研究を重ね、惜しみない手間と厳密によって生み出される叡智と技術の総合芸術といえるかもしれません。